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元大手企業社長が語る「雇用の哲学」 プロデューサー講座レポート
みなさん、こんにちは!(^^)/
人事プロデューサークラブの広報担当、人事の妖精・じん子ちゃんです!
今回は、9月11日に開催されたプロデューサー講座のレポートを、おとどけします!
昭和~平成~令和を駆け抜けて来られた、大手企業の経営者の視点で、人事のみなさんへの深いメッセージもいただきました。秋のおとずれを感じながら、ぜひお読みくださいね(´▽`)
2026年9月 プロデューサー講座
「 事業構造改革と雇用の関係性 」
講師:元 三菱電機エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 齊藤 譲 氏
今回の講師、齊藤氏は三菱電機グループに約40年在籍され、通信機器の研究開発から、企業内労働組合の専従役員、本社経営企画室、新規事業開発営業・半導体部門のトップを経て、三菱電機エンジニアリングの社長を3年間務められました。
今年3月に退任されましたが、「三菱電機では相当変わった経歴」をお持ちとのこと。
本講演では、経営企画室時代に数多く携わった「事業の撤退」において、何を大切に考え、雇用をどう守ってきたのかを、労働組合時代の「特別協定休日」の実体験も交えてお話しいただきました。
「三菱電機を代表する考えではなく、僕自身が考えてきたこと」と冒頭にお話しされていた姿勢が、終始貫かれていました。
■ はじめに:齊藤さんの多彩なキャリア
齊藤さんは早稲田大学理工学部から三菱電機に入社。通信機器の開発を数年担当された後、労働組合の副委員長2期と専従委員長4年、合わせて6年間を過ごされたそうです。その後は研究所計画部スタッフ(1年半)→ 本社経営企画室(4年)→ 営業本部戦略事業開発室(新規事業企画、5年)→ 通信事業本部SEセンター長 → 営業事業部長 → 半導体本部長(常務)→ そして三菱電機エンジニアリング副社長・社長へと、約4年~2年スパンでチェンジされる、社内では異色のキャリアを歩まれました。
齊藤さん「工場の経験も、海外の駐在経験もない。でも全事業本部と仕事をしたから、知り合いはいっぱいできたんです(笑) 」
じん子が心に残ったのは、エンジニアリング社長時代のこんな言葉。
齊藤さん「事業においては全員イーブン。バスケでもガードもセンターも揃って初めてチーム。設計・ソフト・保守・代理店・サプライヤー、どれが欠けても製造業にならない」
親会社と子会社の関係でありながら「完全イーブン」という姿勢が、とっても素敵だなと思いました!
■ 労働組合時代:「特別協定休日」と雇用を守る選択
齊藤さんが専従委員長時代の三菱電機は、まさにどん底の時期でした。3期連続赤字、銀行からの融資問題、株価は180円まで下落。「本当に潰れるかという一歩手前まで」(齊藤さん)
そこで生まれたのが「特別協定休日」。週1日、全員が年間7日間の無給休暇を取得し、その分の給与をカットする、という今も昔も聞いたことのない仕組みでした。Σ(゜Д゜;)えええ!
齊藤さん「労働の対価としての価値は下がらないけど、人件費は下げられる。組合が選んだのは、一部の人に泣いてもらうか、全員で分かち合うかの二択のうち、『雇用を守る』という道だったんです」
もちろん納得は簡単には得られなかったそうです。
「将来を担う研究者がなぜ休まなければならないのか」
「使えない同僚を守るために、俺の給料が下がるのか」… etc
「なぜ」をとことん考え、繰り返し説明を続けた齊藤さん。結果、最終的には多くの組合員から「誠意は感じた」という理解を得られたとのこと。「説明責任に対する誠意が最初のゴール」というお言葉に、組織の危機を乗り越えるヒントを感じたじん子です。
■ 経営企画室時代:携帯電話事業撤退と「整理解雇ゼロ」
本社経営企画室では、事業の撤退・関係会社の清算という、最も辛く泥臭い判断に携わられました。携帯電話事業(売上約1,500億円、社員約1,000人)の撤退は、その代表事例です。
みなさんの中には、「D」で始まる三菱電機さんの携帯、使っていた方もいらっしゃるのでは?
累積赤字と競争軸の変化(無線技術勝負からデジタル技術勝負への転換)により、日本市場で勝ち続けることは難しいという判断。しかし経営陣と現場の主張は対立し、両案併記で社長に提出、
そこで齊藤さんが絶対条件として立てたのが「雇用は守る」。
齊藤さん「この人たちは三菱電機グループの宝物。800人、1000人単位で全製作所への再配置プランを作ったんです。整理解雇なんかありえない!」
(あああ。ここからナレーションを田〇トモ〇ヲさんにお願いしたい…)
さらに取引先に対しても、他の製作所から仕事を回す、資金を用意するなど決して倒産させない支援を実施。撤退後も供給責任・保守責任は長く続きます(液晶事業撤退では供給責任が2028年まで!)。お客様、取引先、地域社会、従業員…「辞めること」のすべてに責任を果たすという、その泥臭いまでの強いお覚悟に、ただただ脱帽でした。( p_q)
齊藤さんの経営企画室時代を含め、三菱電機グループは事業撤退で「整理解雇をしたことがない」とのこと。この一貫性が、すべてを物語っていますよね。
■ 経営理念とステークホルダーの順番
齊藤さんがなぜそこまでできるのか?
答えの一つが「経営理念」でした。
ここで、三菱グループの三綱領(第四代社長 岩崎小彌太氏によって示されたもの)をご紹介します。
所期奉公:期するところは社会への貢献
事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。
処事光明:フェアープレイに徹する
公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。
立業貿易:グローバルな視野に立って
全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。
この理念を実践するのは当たり前のこと。でも「これを100年守り通すのは簡単じゃない」と齊藤さんは語ります。
ここで、Johnson&Johnson社の「クレド」(顧客 → 社員 → 社会 → 株主の順に責任を果たす)を参考に、齊藤さんが導き出した結論はこうでした。
― グループの社員15万人が生活を営む器であり続けること ―
齊藤さん「グループで15万人の社員(家族を含めれば60万人)を養い、100年、200年存続し続けること自体が最大のCSRなんじゃないか」
「会社だけ残って、社員の首を切って、利益が上がって株が上がってもしょうがない」というお言葉が、心に響いてきました。
■ 意思決定と人事の役割:最後に引導を渡せるのは人事
最後は、経営者としての意思決定の考え方について。
- ポートフォリオ戦略(花形・金のなる木・問題児・負け犬)をどう進めても、最後は「社長の意思」。株主総会で説明ができるか。
- 任せるのは「信頼できる人」。でも信頼と好き嫌いは紙一重。だからこそ「間違っている時に逆らってくれる人」を大事にした。
- 組織の「自浄機能」が働いているか、経営者は常に見るべき。
そして人事のみなさんへのエールがこちら!
齊藤さん「最後に社長に引導を渡せるのは人事です。工場の所長の部下でありながら、本当の上司は本社人事部長。この人たちが所長の暴走を止める。人事・経理・監査が果たせているか、それは会社の永続に直結することなんです」
人事の配置は「社長の暴走ブレーキ」というフレーズ、普段なかなか聞けない視点で、ぐっときました!
■ 齊藤さんへの質疑応答タイムから(一部ご紹介)
Q. 座右の銘は?
A. 「仲間を絶対に守る。部下は絶対守る」バスケ部で仲間と一緒だと頑張れることを学んだ。これまでも仲間に恵まれて引っ張ってもらってきた。
Q. 従業員の理解を得るには?
A. 「なぜなんだ」を深く考えて繰り返し説明するのみ。全員の納得は無理でも「誠意は感じた」まで持っていく。終わるまで帰らない。
Q. 信頼できる人とは?
A. 「逃げない人。嘘をつかない人。自分の都合を相手にぶつけない人」
Q. 人事から経営への具申、言えない …
A. 最後は吹っ切るしかない。言えないのは自分が罰を受けるのが嫌だから。吹っ切ると楽になるし、強くなれる。
また、「他の会社に転職できるだけのスキルを目指せ」という考えと、その対極にある「会社がちゃんとしていれば、最後まで面倒を見る」という安心感、この両方が成り立つ会社の在り方について、欧米型雇用との対比も含めて、最後にお話しいただきました。
■ 参加者のご感想(アンケートより一部抜粋)
・社員を大切にする経営者は素敵です。組合のご経験が大いに生きたもので、稀有な経営者でいらっしゃると感銘を受けました。
・実体験に基づいたお話で大変参考になった。逃げない、諦めない。
・大企業経営者のリアルな葛藤と覚悟をお伺いできたこと。企業規模は全く違いますが、共感を覚えるとともに、尊敬致しました。
・齊藤さんが自分の信念を強く持って職務を全うされたこと。
・経営者としての理念・信条、思考・判断・行動の規範、そしてそれらが導く「結果」について深く考えるきっかけを与えていただきました。
社長を退かれた後も「毎日遊んでいると奥さんに怒られる(笑)」と、現在、ある会社の顧問としてご活躍中の齊藤さん。
心に残る多くの学びを、ありがとうございました。
